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GAMELIFE 365

365日まいにちコントローラをにぎりたい社会人ゲーマーのプレイログ

【本】さらっとブックレビュー vol.7 『大東京ぐるぐる自転車』

読みました

大東京ぐるぐる自転車 (ちくま文庫)

大東京ぐるぐる自転車 (ちくま文庫)

六十八歳で自転車に乗り始め、ペースメーカーを装着した体で走行した距離は約四万キロ。所有(投資)した自転車は愛車Dahonをはじめ計七台。転倒回数は数え切れず。八十一歳にして飄々と自転車人生を謳歌する元大学教授、不死身のサイクリストの痛快東京探訪記―小石川、青梅、スカイツリー江の島など。文庫化にあたり、新たに書き下ろした「堀切菖蒲園」を収録。

★感想★

自転車にまつわる話というよりも、東京の地理にまつわる話がメインのエッセイ。
東京に住んでいる(住んだことのある)人でもなかなか目を配らないような日常的なスポットがユニークに筆写される。自転車に跨って走行中も目にする看板や史跡が思わず気になってしまい、当初の目的から外れそうになる著者の自由散策が、蘊蓄と皮肉、そして老齢な自分を戒めるような自虐を交えながら軽快に綴られる。

自転車に興味が無くとも、「ブラタモリ」のようなニッチでマニアックな風土史紀行に興味のある方なら、きっと楽しめる一冊。

【本】さらっとブックレビュー vol.6 『駄作』

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駄作 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

駄作 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ベストセラー作家だった親友ビルが死んだ。追悼式に招かれた売れない作家プフェファコーンは、ビルの仕事場で未発表の原稿を見つける。誘惑にかられた彼はその原稿を持ち出し、自作と偽って刊行した。思惑通りの大当たりで、一躍ベストセラー作家に成り上がったプフェファコーンだったが、その身の上に思いもよらぬ大事件が! 人気作家の両親を持つ著者が、その才能を開花させた驚異の傑作! 【本書には奇想天外すぎる展開があることをあらかじめ警告しておきます】

★感想★

なんというか、形容しがたいミステリ。物語中盤でこれまでのプロットをひっくり返す転換をもたらしながら、最終盤にはそのひっくり返ったストーリーをさらに意図的に放棄(昇華?)するような大胆なエンディングが用意されている。

全編を通して素直に「面白い」という感想を抱くことが難しく、人によってはまさに作品名通りであると感じてしまうかもしれない。既定の評価枠に捉われない挑戦的な作品が読みたい方、よくあるミステリ作品に飽きた方にはおススメ…かな。

【本】さらっとブックレビュー vol.5 『ぼくは本屋のおやじさん』

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ぼくは本屋のおやじさん (ちくま文庫)

ぼくは本屋のおやじさん (ちくま文庫)

22歳(1969年)ロックグループをやめ、小さな書店を始めた著者の奮闘記。置きたい本が入荷しない小さな店のもどかしさ。冊子『読書手帖』を作って客とふれあい、書店主同士で通信を作り交流。再び歌手を始めるまでの22年間で学んだ大切なこととは。文庫化にあたり、エッセイ8本と「早川書店」のブックカバー等を収録(絵=藤原マキ)。

★感想★

初版は1982年に晶文社より発行された本。

繊細な感覚と飾らない人間臭さが表現された文章は読んでいて心地良く、エッセイというジャンルが苦手な私でも著者の感性にとても惹かれた。本屋論にありがちな高尚な意識や文化的担い手を自負することもなく、むしろ、著者のそもそもの開店動機は「実際、本屋をはじめる前に夢に描いていたことは、店は小さく、たばこ屋兼本屋みたいな、できれば、好きな本だけを集めたような、あまり売れなくてもいいような、猫でも抱いて一日中坐っていれば、毎日が過ぎていくような、そんなのどかなことを考えていた。」というものなので、読み手も肩肘張らずにリラックスしながら楽しめる。

それと、私自身過去に本屋へ勤めていた身としては、本書の出版から30年以上経った現在でも出版流通の内情が当時からほとんど変わっていないことに驚く。20代前半で本屋を開店した著者は、本書にて業界の不条理や著者が考える商売のスタンスを淡々と述べているが、本屋という仕事に関わった経験のある方(本屋という空間が好きな方)なら「うん、うん」と共感できることもたくさんあるはず。

これまでは世代的に著者のことをほとんど知らなかったものの、本書の雰囲気やYoutubeに上がっている情感ある歌声を聴いて、何となくその魅力が分かったような気がする。

早川義夫公式サイト

【本】さらっとブックレビュー vol.4 『木暮荘物語』

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木暮荘物語 (祥伝社文庫)

木暮荘物語 (祥伝社文庫)

小田急線・世田谷代田駅から徒歩五分、築ウン十年、二階建て全六室のおんぼろアパート・木暮荘。現在の住人は四人。一階には、死ぬ前の愛あるセックスに執念を燃やす大家の木暮老人と、刹那的な恋にのめり込む女子大生・光子。二階には、光子の日常を覗くことが生き甲斐のサラリーマン・神崎と、姿を消した恋人を想いながらも別の男性からの愛を受け入れた繭。一見平穏な木暮荘の日常だが、それぞれが「愛」を求めたとき、痛烈な哀しみがにじみ出す。それを和らげ、癒すのは、安普請のぼろアパートだからこそ生まれる人のぬくもりだった……。直木賞作家が紡ぐおかしくも温かな人間物語。

★感想★

おんぼろアパートに住まう住人たちが代わる代わる主人公となる連作短編集。

「黒い飲み物」「穴」からは一気にドス黒さや背徳感が増し、刺激的な物語となった。一方で、続く「ピース」「嘘の味」ではそうした人の欲情や悲哀を鮮烈に晴らすほどの爽やかさや愛おしさがあり、すべての短編が連なることで見事なストーリーを描いている。

また、男女問わずそれぞれの人物が“性(=愛)”にまつわる行為や衝動を披歴することで、木暮荘という無機質な建造物に生々しいほどの実体を与えており、本作は木暮荘で暮らす人々の物語というよりも、木暮荘の物語と言った方が相応しいほど、舞台であるアパートに魂が宿っている。

直接的な住人同士の関わり描写はそう多くないにも関わらず、読後には木暮荘を俯瞰した読み手に不思議な一体感と温かさを与えてくれる作品。

【本】さらっとブックレビュー vol.3 『球団と喧嘩してクビになった野球選手』

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谷繁元信をキレさせ、三浦大輔を運転手代わりに使って、小宮山悟を巴投げ、編成担当の名刺は丸めて投げ捨てる…
こんな破天荒なプロ野球選手(現モツ鍋屋店主)、見たことない!
ファンはもちろん多くのプロ野球関係者(球団フロント以外)から、今も愛される「不器用で真っすぐな男(小宮山悟氏談)」こと、
中野渡進氏の波瀾万丈すぎる自伝!

感想

元横浜(現DeNAベイスターズ投手だった著者の激動のプロ野球戦記&起業奮闘記。(愛が溢れる!?)罵詈雑言を交えながら現役当時を振り返り、セカンドキャリアとしてもつ鍋屋を開業するに至る悪戦苦闘ぶりは読んでいて痛快。私自身野球に関しては、スポーツニュースでダイジェストを観たり、たまたまチャンネルを合わせた時にやっていたら観る程度のものであるが、当時の名選手とのエピソードやさりげなく語られるプロ野球界の舞台裏など、実際に球界で活躍した身でしか感じ得ない実情は面白かった。

そもそも、著者は現役当時からその破天荒なキャラクターで一部に熱狂的なファンを抱えていた選手のようで、本書を読んでいても偉大なる先輩選手からの寵愛ぶりや引退後の人情味あふれる人との繋がりの描写から、いくら周りに暴言を吐こうとも愛される稀有な人間性を持っていることがよく分かる。現役時は「気合い」で投げ続けたピッチャーだけに、困難に立ち向かう勇気や新たな人生のステージを迎える心構えを熱く教えてくれる一冊。

ちなみに、当のもつ鍋屋はオープン10周年を目前にしながら昨年突然閉店させてしまったようで、今はサラリーマン(文中に出てくるお世話になったという会社?)として奮闘している模様。