【レビュー #6】ファイナルファンタジーXIII

ライトニングがPSPジャンヌ・ダルク」の主人公に見えてしょうがなかったです。

良い点

とにかく映像表現の美麗さに尽きます。キャラクターの肌の質感までも感じさせるきめ細やかさは、流石のスクエニクオリティと言えます。言葉で語るよりも表情で伝えることが重視される近年のRPGの中でも、これほどまでキャラクターが「演じている」作品は滅多にありません。また、戦闘シーンでの燃焼、凍結、雷光などのエフェクトも美しく、魔法ひとつひとつの特性がしっかりと表現されています。

戦闘は従来よりもかなり戦略的でスピーディになっており、単に ”たたかう” を連打するだけよりも緊張感が持続します。ブレイクの概念も気持ち良く、防御が堅かった敵を一気にタコ殴りにする爽快感はかなりものです。今作からは空中での追撃も可能なため、より立体的なバトルが繰り広げられます。MPの廃止、戦闘後の体力全回復等、これまでのシリーズの慣例を敢えて否定したことによって得たものは大きいと思います。「戦闘が楽しい」というRPG本来の面白さを実感できます。

システム周りもよく整えられており、一切ロードを挟まないメニューの開閉は実に気持が良いものです。たとえロードが瞬時だとしても、ゼロなのかそうでないのかのは差は意外なほど大きいと体感しました。シンボルエンカウントでの戦闘突入時もシームレス(画面切替はアリ)なので、今作の売りであるスピード感を損なわずにプレイできます。本体HDDへのインストールを全く要せずに、ここまでの快適さを演出する技術力には感嘆します。

物語を彩るBGMも素晴らしく、発売前のPVなどでも使われていた「閃光」は次世代のFFらしさがビシビシ伝わってくる良い曲です。疾走感あふれるメロディにバトルの躍動感も一層高まります。各ロケーションごとに流れる曲もそれぞれが印象的で、そこがどういった雰囲気であるのかを明確に伝えてくれます。

残念な点

多方面で酷評されている通り、RPGとしてのストーリーの質に問題があります。場面ごとのセリフ回し、キャラクター設定などはひとまず置いておいても、物語のオチの付け方には納得ができません。辿り着いたエンディングにホロッとするならば、それはストーリーへの感動ではなく、映像のクオリティと「外さない」主題歌による力が大きいと思います。

前日譚として予め本編以前のエピソードが小説として公開されていましたが、世界観を構築するために用意された詳細な設定がゲーム中に全く生きてこないのが惜しいです。危機に瀕するセカイを救うのがFFとしてのプロットだとしても、そこまでの導き方が稚拙なためにこれほどの悪評につながってしまっている気がします。

終盤までひたすら一本道を突き進む展開に対しては私としてはさほど不満はありませんが、プレイヤーへの動機付けが物足りないために苦痛として感じられてしまうのでしょう。クリア後には、RPGというジャンルの核とも言える部分(=物語)の重要性が却って実感できるという皮肉な結果が待っています。

最後に

かなり辛辣な事も書きましたが、個人的にはこれまで体感したことの無いアクティブな戦闘が楽しめたこととHD機のパワーを発揮した映像と音楽を十分堪能できたため、ゲームとしては楽しめました。

ふと思うことは、この平坦なゲーム展開も強引にハッピーエンド(?)へ持っていくストーリーも【FABULA NOVA CRYSTALLIS FINAL FANTASY XIII】という他作品(『ヴェルサス』『アギト』)との関連性のため、必然的に仕組まれたものではないかということです。

特に『ヴェルサス』は名前の通り今作とは対照的な存在になり、自由な行動範囲、恋愛描写を必要としないダークなストーリーといった形になるのではないでしょうか。

もしかすると、3作品が出揃った時、本作が再評価されるのかもしれません…。