【レビュー #28】The Amazing Spider-Man【PS3】

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評価 6.8 / 10 (プレイ環境:北米版、日本未発売

独創性 映像性 音楽性 操作性 熱中度
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「マンハッタンを空中散歩」

何よりもマンハッタンの高層ビル群の間を自由にスイングしながら飛び回る快感は他のオープンワールド系では味わえない。蜘蛛の糸をしならせて空中ブランコをし、悪人を見つけたら狙いを定めて一気に飛びかかるスピード感は映画や漫画のアクションさながら。『Prototype』や『infamous』よりもキャラクターの頭身が長いため迫力もある。どんなに高所から飛び降りようとダメージは無いため、心行くまで空を疾走することができて気持ち良い。

しかし、オープンワールドと言えども面積は狭め。マンハッタン島の外には行けないため、行動範囲も限られる。また、街を行き交う市民や車の通行量も控えめであり、市民から依頼されるサイドクエストのようなものも無いに等しいため、時折発生する暴力事件やカーチェイスなどを終えてしまうと飛び回ることしかすることが無くなるのは寂しい。他の超人系オープンワールドアクションにも多いように、プレイヤーがゲーム中の世界に干渉することがあまりできず、結局はストーリーを追うだけになってしまいボリュームが少なく感じられてしまうのは残念。

なお、街並や他のキャラクターグラフィックと比べて、スパイダーマンモデリングは非常にリアルでスーツの質感も見事。着替えるスーツによってはスパイダーマンの体のラインや筋肉の凹凸を(気持ち悪いくらい)しっかりと表現しており、ファンはこの点だけでも満足できるかも(笑)

「爽快感はあるが戦略性はあまり無い」

発売前レビューでも散々言われていた通り、戦闘システムはバットマンとほぼ同じ。基本的には攻撃とカウンターでコンボを継続し、派手なフィニッシュムーブで敵をダウンさせる。アクロバティックな体術と敵を封じるウェブはスパイダーマンらしく、挙動の軽さも相まって格闘の爽快感は高め。ただ、バットマンのようなボタン同時押しアクションが無いため、あちらよりはコンボのバリエーションが少ない代わりに難易度は低めと言えそう。加えて、無発覚状態からのステルステイクダウンが序盤のザコから終盤の強化兵まですべからく通用するため、戦闘からも一瞬で退避できる(=敵もスパイダーマンを見失う)
アクションと組み合わせれば深く考えずにゲームクリアまで到達できる点も物足りなさを感じさせる。

ほとんどのボス戦も攻略パターンのバリエーションが少なく単調だが、市街地を飛び回りながら巨大なボスと戦うシーンはなかなか迫力がある。あまりにスピード感があってカメラがついていかない場面もあるものの、壁際に寄った際もプレイヤーを透過してカメラが回転するのでカメラワークの悪さは気にならなかった。

それでも、バットマンをプレイした方なら分かって頂けると思うが、ゲームに慣れるにつれて、敵に触れさせることなく流麗な動きで一蹴できたときの気持ち良さは本作でもしっかりと表現されているので、手軽なボタン操作でアクションヒーロー気分を味わいたい人、原作ファンの人には安心して勧められるクオリティには仕上がっている。

【総評】

本編のボリュームが少ない割には収集物が多くうんざりしたが、空中移動の楽しさがあったためなんとか乗り切れた。ストーリーは公開中の映画のエンディング直後の話らしいので、観ていない場合は人物や舞台背景への理解が足りないものの、ストーリー自体はアメコミらしい展開なので理解できる。(かく言う私もまだ観てませんし…)注意点としては、映画とはボイスキャストが異なっていることか。

軽口やジョークを飛ばしながら敵に立ち向かっていくスパイダーマンは痛快で、空中で気持ち良さそうに叫ぶ姿は愉快。オリジナリティには欠けるがゲームの出来自体は良いので、本編を補完するようなチャレンジミッションなども盛り込んでもらえるともっと楽しめたかな。