シリーズを重ねる毎に中身が乏しくなる一方 〜【レビュー #36】真かまいたちの夜

総合評価 5.2 / 10 (プレイ環境:日本カードソフト版)

独創性 映像性 音楽性 操作性 熱中度
2 3 4 2 2
かまいたちの夜』のアイデンティティ

発売日からかなりの時間が経っているとはいえネタバレは避けたいので詳しくは書かないとしても、今作メインシナリオの犯人(と動機)および殺害方法には拍子抜けした。今作では『かまいたちの夜』には欠かせない(であろう)気候や環境を巧みに利用したトリックが用いられないため、「完エンド」を迎えても読後のカタルシスはこれまでと比較して圧倒的に少ない。なんだか『かまいたちの夜』としてのアイデンティティを失ったようで、これまでシリーズを買い支えてきた層から批判が多いのも納得できる。

さらに、恒例のお楽しみ要素である「ピンクのしおり」は有料DLC化されており、ソフト単体ではあくまでも“読むための権利”を獲得するに留まるというこれまた納得できない仕組みになっている。せめて無料DLCなら理解は出来るものの、『オリジナル』『2』と比べるとボリュームも少なく感じる今作において敢えて外部に切り離す意図が分からない。今世代機で『428シリーズ』や『極限脱出シリーズ』、『日本一ソフトウェア系のノベル物』などの良作が生まれる中にあって、『かまいたちの夜』は作を重ねる毎にクオリティが落としているように思われて仕方がない。
(ただ、過去作のサウンドが継承されていたりと相変わらず音回りは良い!)

シリーズ初のボイス採用やシステム回りについて

今作ではシリーズ初の声優によるボイスアクトが行われている。とは言え、全編フルボイスという訳ではなく、重要な部分(感情が表出するような部分)のみボイスが当てられている。ゲーム開始当初は違和感を感じたが、進めるに連れて馴染んでいけた。声優の掛け合いで笑えるシーンも多く、シナリオのつまらさを紛らわすためにも却って良かった(笑)

システム回りの事では、フローチャートを行き来しながら多数のエンディングを見るゲームなのにエンドロールが飛ばせないのが地味に煩わしい。せめて2回目以降はカットできるようにするなどして欲しかった。また、過去の選択肢等にジャンプした際に暗転してロードが挟まったりしてレスポンスの悪さも気になった。マルチプレイはまったく面白そうでは無いので未プレイ。


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以上から、ノベル系アドベンチャーに興味のあるシリーズ初の方には楽しめるかもしれない。ただ、どうせならアーカイブスにて600円で配信されているオリジナル(と『弟切草』)をプレイした方がよっぽどハマれる。

★プラチナトロフィー獲得

通算59個目のプラチナトロフィー。
読了率が98%から上がらなかった原因は例の如く「スパイ編」に有り。

本作品に限ったことではないが、VITAソフトのトロフィーアイコンは手抜きデザインが多いような気がするなー。