【レビュー #37】『タイムトラベラーズ』(VITA)

総合評価 8.0 / 10 (プレイ環境:日本カードソフト版)

独創性 映像性 音楽性 操作性 熱中度
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▼イシイ氏らしい楽しめる(泣ける)作品

どうしても『428』と比較されがちだが、本作は本作なりにとても良く出来ている。前者が実在の街を題材にしたシリアスな実写劇だったのに対し、本作はタイムトラベルをテーマにしたSFチックなアニメーションドラマ。しかし、見た目は違えど、個性ある主人公たちの紡ぐストーリーがラストで見事に収束する様はまさにイシイ作品。多彩なTips(小ネタ)や、思わずクスりと笑ってしまうギャグセンスも健在で、ところどころ厳密さに欠ける表現はあるものの、物語の完成度は総じて高い。また、本編クリア後にプレイできるTTPhoneは一見すると『ラブ○ラス』もどきの恋愛コミュニケーションゲームと錯覚するが、最後に本編を補完する役割だとプレイヤーに知らせる仕組みは心憎い。本作の「ノリ(雰囲気)」に合うかは重要な要素とは言え、緊迫感のあるオープニング・笑える中盤・泣けるラストとドラマ性豊かなゲームプレイは遊ぶ価値あり。

▼フルボイスのアニメーションも丁寧に作られている

各キャラクターのフルボイスは個性的な性格が引き立つようでグッド。3Dモデルのクオリティに関しても、3DSPSPとのマルチ作品であることから批判も目に付くが、想像以上によく動き、よく喋るので個人的には十分満足できる出来。一定のリアルさを保有していた『428』と対比の上で本作を敬遠するのはあまりにも勿体ない。レベル5が開発・販売を担っているだけにドラマ性を損なわない演出、音楽は巧みで、5人の主人公を導く存在であるヒロイン「みこと」の造形も人気声優の演技も相まって“外さない”。くどい程キャラ立ちしているように見えて、実は誰がプレイしても愛着が持てるようなデザインにしてあるバランス感覚は流石。


余談だが、最近のノベルゲーはプレイヤーが物語へ介入することをゲーム内でメタ的に示す事が手法なのか。ひと昔前であれば、ゲーム内のキャラクター達はプレイヤーの「神の見えざる手」によって操られていることに目を向ける事は無い(ように見える)が、本作にしろ、直近に遊んだ『善人シボウデス』にしろ、見えない存在であるはずの画面の向こうにいるプレイヤーに対して、キャラクターが自分たちを正しく導いてくれる事を望むシーンが印象的に映る。技術的なアップグレードの恩恵が少ないジャンルなだけに、遊び手に対する心証的な仕掛けが今後どのようになっていくのかは非常に興味深い。

◎プラチナトロフィー獲得

通算60個目のプラチナトロフィーを獲得。
一覧で見たときにアイコンが繋がって絵になるアイデアは面白い。たぶん、今までのソフトでは見たことないかな。