【レビュー #57】Metal Gear Solid : Ground Zeroes(PS4)

【レビュー時のプレイ時間】20h

<総合評価> 3.8 / 5

独創性 映像性 音楽性 操作性 熱中度
4 5 4 4 2 各/5点中
良い点 +
  • FOXエンジンの描写力が発揮されたグラフィック。雨に濡れた質感や光源の眩しさがリアルに再現され、スニーキングの緊張感や没入感を高めてくれる。前作『4』と比べても、PS4のマシンスペックの大幅な向上も手伝ってよりフォトリアルな感覚を味わえる。今作でプレイできるエリアは人工的な基地の範囲に留まるが、本編で主な舞台となるらしいアフガニスタンの荒ぶる自然がどのように描かれているのか期待が増す。フレームレートが高く、安定しているのも気持ち良い。
  • TPSとしての操作性が更に練り込まれている。肩越しのスイッチ、FPS視点への切替、スプリント、緊急回避など、どれもが直感的で馴染み易い。メタルギアに立体的な攻略をもたらすであろう新アクション・ジャンプを指定箇所のみとしたゲームデザインも不格好にならないための英断。前作にあった横ローリングよりは、今作の緊急回避の方が次のアクションに繋げ易そう(現に『MGO2』ではあまりみかけなかったし)。ホフクや中腰からの射撃モーションも多彩かつ自然で、毛利さん監修の力の入れ具合が窺える。この操作性で楽しめるであろう『MGO3』の情報解禁が待ち遠しい。
  • オープンワールド化したスニーキングアクションとして、確かな方向性を感じられる。これまでのメタルギアは(シリーズ経験者になればなるほど)パターンの中でいかに最適な行動を取るかといったある種のパズルゲーム的な様相も感じられたが、今作は広大なマップや敵AIの高度化も相まって、じっくりと攻める潜入感を楽しめそう。メタルギアらしいカジュアルさとスプセルのストイックさが上手くミックスされている感覚。
悪い点 -
  • 今作を単独パッケージ作品として売り出すにはボリュームが見合わない。価格は廉価に抑えられているとはいえ、やはり「有料体験版」というレッテルは覆せない。ゲームとしての完成度や期待値は非常に高いことを理解させてくれるだけに、提供手段としてもう一考して欲しかったところ。ゲーム内のトライアルにオンライン要素が導入されているとしても、これだけでは楽しめる時間などたかが知れる。
  • TPSとして射撃回りの操作性は良い点でも挙げた通り概ね良好だが、細かい部分で物足りない点は残る。例えば、カバー状態からのビハインド撃ちが出来るのに、双眼鏡を使うと体がはみ出てしまう点や、ホフク転がりが相変わらず使い辛い点など、よりスマートにスネークを動かしたいプレイやーからすれば、更なるブラッシュアップを望みたい。
  • MGS4』『PW』と無線のお楽しみが薄れてきているなかで、今作でも必要最小限の情報のやりとりに終始しそうなのが残念。潜入時に長々と会話し続けるのは現実感に欠け、無線時もリアルタイムに時間が経過するゲーム性と噛み合ないことからも仕方の無いことなのかもしれないが、思わず笑えたり雑学的な知識を蓄えられる会話集を再び楽しみたいのが一ユーザーとしての希望。『PW』のようにカセットテープを収集して事後にじっくり聴くスタイルは、臨場感に欠けあまり楽しくない。


総評

本編の持つインパクトの片鱗を感じさせてはくれるものの、予想以上に「さわり」程度しか遊べないのがもどかしい。『MGS2』のタンカー編、『MGS3』のヴァーチャスミッションくらいのボリュームはあるかと思いきや、サイドミッションを除いた本筋はごく僅か。カットシーンの端折られ方からしても、本編に同梱されるであろう本来の『Ground Zeroes』はもう少し遊び応えのあるものだと信じたい。

それと、何よりも期待するのは一刻でも早いリリース。今後の予想としては、8月のgamescomで若干の情報提供(海外ゲーマー向けにMGOのチラ見せ?)、TGSで新トレーラーおよびざっくりとした発売時期の提示(2015年春とか)だろうか。小島プロが手塩にかけた「FOXエンジン」の技術デモと成りうる作品だけに手が抜けないのは分かるのだが、昨今の開発費高騰や膨大な工程によるリリーススケジュールの不明確化に一石を投じるためにも、本作の早期完成・リリースが望まれる。結局は自社KONAMI作品のみに使用されるのでは、経営陣でもある小島監督の本意でもないだろうし…。

ともかく、ゲームとしてクオリティは国内有数の仕上がりになることは想像に難くないので、順当に進化しつつある新世代メタルギアを早く遊びたい一心だけ。