【レビュー #59】ウォッチドッグス(PS4)

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【レビュー時のプレイ時間】 50〜60 h

<総合評価> 4.0 / 5

独創性 映像性 音楽性 操作性 熱中度
4 4 4 4 4 各/5点中

【良い点】

“ボタンひとつで街を操る万能感”

オープンワールドで再現されたシカゴの街をボタンひとつで意のままに操れて楽しい。NPCの人間臭い個人情報を覗けるためか、ctOSで支配された街はディストピアサイバーパンクというほど現実感を失っていないので、既存のクライムアクションと変わらない没入感がある。スマホひとつで手軽に何でもできてしまう万能性は「ハッカー」という言葉の重みを感じさせてくれるものではないものの、街全体を武器にして戦うというコンセプトは新鮮。

“ステルスアクションとしても及第点”

監視カメラ等を経由しながら敵の位置を探り、物陰にカバーしながら距離を詰め背後からテイクダウンする。おおまかな流れとしては従来のステルスアクションから見て目新しい点こそ少ないながら、ハッキングを駆使して陽動したり敵の所持する爆発物を暴発させたりと、周辺環境を活用しながら優位に立ち回る戦略性はある。ただし、発砲音で気付かれないサイレンサー付きの特殊拳銃が優秀すぎるのは本作でも共通項。

“シリアスでボリュームのあるストーリー”

主人公の復讐に重きを置いたストーリーのため、オープニングからエンディングまでシリアスかつ裏切りが重なる陰鬱な展開が続く。マフィアとフィクサーの抗争と考えれば当然のことだが、緊張感ある犯罪ドラマを楽しみたい方にはドハマりな構成。また、キャンペーンのボリュームもオープンワールドゲームとしては多い方で、ミッション内容も尾行から銃撃戦、カーチェイス、果てはNPCの隠密誘導まで多彩なため、シカゴの街を駆け回りながら飽きずにプレイを楽しめる。

“シームレスなハッキング合戦は独自性強し”

いつの間にか自分の世界に侵入され、シームレスで唐突に始まる1対1のハッキング合戦は手に汗握る。イメージ的にはデモンズソールやダークソウルのPvPに近いが、ハッキングする方は完了まで見つからずに隠れ続ける必要があり、静と動の攻防は単なる銃撃戦とは違った達成感がある。システム的にブラッシュアップしてほしい点も無いわけではないが、本作のマルチプレイ要素を踏襲する同社の次世代機専用タイトル『AC:Unity』への期待は非常に大きい。

【悪い点】

“グラフィックはデビュートレーラーほどの衝撃は無い”

度肝を抜かれたE3でのデビュートレーラーと比べると、やはりグラフィックの物足りなさは否めない。雨に濡れる路面や眩しい夕焼け、明明と闇夜を照らすシカゴのオフィスビル群など目を見張るべき点は有るとは言え、PS4専用に作られ今春にリリースされた『infamous SS』には残念ながら及ばない。一部のコアなユーザーが持つハイエンドなゲーミングPCでのみ再現可能なグラフィックを、コンソールユーザー向けのトレーラーやスクリーンショットに使用するのはいい加減控えてもらいたいもの。

“サブミッションの単調さとクリア後のリプレイ性の低さ”

サブミッションのフィクサー契約にて、ひたすらシカゴの街中を警察から逃げ回るべくドライブするのには正直うんざり。そして、オープンワールド系には付き物の「クリア後の虚無感」もこれまで通り。多数の敵を相手にするギャングハイドアウトや車列襲撃も一度クリアしてしまうと再プレイできないため、キャンペーンやサブミッションを完了してしまうと、稀に発生する暴漢を取り押さえるくらいしかやりがいが無くなる。表現力の上がった現世代向けのオープンワールドゲームにて、遊び応えの点から言えばまだまだ進歩の余地は残されているように思う。

“オンラインのラグは改善を望む”

オンラインにて海外ユーザーとマッチングした際にひどいラグが発生する場合がある。終始コマ送り状態やワープを繰り返したりとまったくもってゲームにならないこともあり、長く遊び続けたいと思うモチベーションが削がれる。サーバー制ではないので致し方無い部分があるのかもしれないが、似たようなマッチングシステムを搭載すると開発者が述べている『AC:Unity』ではよりスムーズなゲームプレイが実現されることを望む。


【総評】

新規IPとして驚異的な出足を見せ、今なお堅調にセールスを伸ばしている本作だけに、グラフィック的な若干の不満足さはあったものの、概ね期待通りの面白さを持つ作品だった。「スマホがあれば何でもできる」的なオーバーパワー感は、主人公が超人的な力を持つ『infamous』や『prototype』などとは異なる万能感を与えてくれる。

【新世代のオープンワールドゲーム】を標榜するに恥じない本作の意欲的なコンセプトは評価できるので、今世代のマシンパワーを持ってして、旧来型の「広い箱庭を探索する」だけに留まらない、よりインタラクティブでダイナミックなオープンワールドゲームが今後も誕生してくれることを楽しみにしている。