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まいにちコントローラーを握りたいゲーマーのプレイログ

【本】さらっとブックレビュー vol.4 『木暮荘物語』

木暮荘物語 (祥伝社文庫)

木暮荘物語 (祥伝社文庫)

小田急線・世田谷代田駅から徒歩五分、築ウン十年、二階建て全六室のおんぼろアパート・木暮荘。現在の住人は四人。一階には、死ぬ前の愛あるセックスに執念を燃やす大家の木暮老人と、刹那的な恋にのめり込む女子大生・光子。二階には、光子の日常を覗くことが生き甲斐のサラリーマン・神崎と、姿を消した恋人を想いながらも別の男性からの愛を受け入れた繭。一見平穏な木暮荘の日常だが、それぞれが「愛」を求めたとき、痛烈な哀しみがにじみ出す。それを和らげ、癒すのは、安普請のぼろアパートだからこそ生まれる人のぬくもりだった……。直木賞作家が紡ぐおかしくも温かな人間物語。

★感想★

おんぼろアパートに住まう住人たちが代わる代わる主人公となる連作短編集。

「黒い飲み物」「穴」からは一気にドス黒さや背徳感が増し、刺激的な物語となった。一方で、続く「ピース」「嘘の味」ではそうした人の欲情や悲哀を鮮烈に晴らすほどの爽やかさや愛おしさがあり、すべての短編が連なることで見事なストーリーを描いている。

また、男女問わずそれぞれの人物が“性(=愛)”にまつわる行為や衝動を披歴することで、木暮荘という無機質な建造物に生々しいほどの実体を与えており、本作は木暮荘で暮らす人々の物語というよりも、木暮荘の物語と言った方が相応しいほど、舞台であるアパートに魂が宿っている。

直接的な住人同士の関わり描写はそう多くないにも関わらず、読後には木暮荘を俯瞰した読み手に不思議な一体感と温かさを与えてくれる作品。

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