【レビュー #76】アサシン クリード シンジケート

アサシン クリード シンジケート』のレビュー。


【レビュー時のプレイ時間】 40h
<総合評価> 4.0 / 5

(項目) 独創性 映像性 音楽性 操作性 熱中度
(評点/5点) 3 4 5 4 4
いいね!
  • シリーズ初のダブル主人公(リベレーションズは除く)という作風が新鮮。野心的で危なっかしいジェイコブと知的で冷静なエヴィーの対比で進行するストーリーも興味深く、従来のひとり主人公の時よりも物語が多面的に描かれている。メインストーリー以外の場面では、自由にキャラクターを切り替えられる試みもユニーク。
  • 今作で初登場したロープランチャーの移動が快適。シリーズ従来作で例えるなら、任意の場所で高速リフト移動ができるようなものなので、シンクロポイント目指して高層の建築物を登るときや囲まれた敵集団から脱出するときに非常に便利。画面越しでもヒヤヒヤするような高い建物によじ登るのもアサクリの醍醐味のひとつとは言いながらも、その動作を面倒と感じるシーンも少なくないため、こうした救済的なアクションは歓迎。ただ、次作以降でも代替的なアクションが導入されないと不満を生むかも。
  • マルチプレイを削除し、完全なシングルゲームとしたおかげで前作『ユニティ』のようなバグや不安定な挙動はほとんど見受けられない。前作のパリのような豪華な建造物や広場を埋め尽くす圧倒的な群衆表現は見られないものの、産業革命時のロンドンの雰囲気やオープンワールドとしての密度は十分。任意着脱可能なフード、かがみ移動の有効性、登攀中の窓への侵入し易さなど、細かい改善点も多く、ステルスゲームとしても地味ながら進歩を感じさせる。
  • 前作で改善された戦闘システムがよりシビアになっており、カウンターを誘うだけでなく、こちらから防御を崩したり、コンボの間にアイテムを使用したりと戦いの幅が広がっている。瀕死の敵をまとめてテイクダウンするマルチフィニッシャーには迫力と爽快感があり、どの敵を優先的に攻撃するかを考える立ち回りも楽しい。『バットマンアーカム』が確立したフリーフローシステムが好みならば、コンボ表示の概念もある今作の戦闘は肌に合うはず。
おしい!
  • ロードが長い。ゲーム開始前に30秒ほど、マップ内のファストトラベルに20秒ほど要する。前作でも同程度かかったか記憶が曖昧だが、今作は移動や戦闘のテンポが良いだけに余計に長く感じるのかも。下手にファストトラベルを使うよりも、今作は乗り物である馬車が用意されているので、マップ内の移動はロンドン観光を兼ねながら馬車に頼った方が快適かも。
  • 敵のAIに進化が感じられない。特に索敵の際に挙動不審になったり、オブジェクトに引っかかったりとステルスゲームとしての緊張感が削がれるのは残念。この部分はPS3時代から大きく変わっているようには思えず、グラフィックや戦闘システムの改善に比べて少々物足りない。
  • せっかくの姉弟主人公なのに、修得するスキルツリーにあまり差が無いのは残念。大まかなタイプとしてエヴィーがステルス向き・ジェイコブが戦闘向きとはなっているものの、一部専用スキルを除けば、最終的に似たようなステータスになってしまう。ストーリーの進行がキャラクター固定(基本的に交互)となっているので仕方が無いのかもしれないが、もう少し思い切った方向性を与えても良かったのではないか。
  • アサシンの父に育てられたという境遇から2人ともゲーム開始時から優れた能力を備えているが、アサクリの導入部としてはその能力を身に付ける過程やアサシンとしての決意を見せて欲しかった。世界を牛耳ろうとするテンプル騎士団との時代を超える戦いという明確なストーリーラインがあるのだから、もっと刺激的なプロローグが創れそうな気がするのだが…。(現代パートとの絡ませ方含め)


★まとめ★

年刊のビッグフランチャイズとなってからマンネリ化を指摘する声は避けられない状況だが、今作は前作の躓きからは挽回を果たす出来であると言える。シビアさと爽快さを両立させた戦闘やステルス操作の改善など、IP本来の魅力を見つめ直す姿勢は素直に評価したい。

また、普段は本シリーズを英語音声でプレイしているのだが、今作は最初から日本語吹き替えでプレイしてみた。ジェイコブ、エヴィーともイメージと合致する声優起用であり、個人的にこれまでで一番しっくりくる吹き替えだと感じた。


なお、最近海外の掲示板を賑わす噂では、今年のシリーズ作品のリリースは見送られ、来年に大幅に革新を遂げたタイトルとしてリニューアルされるとのこと。舞台も原点回帰とも言えるエジプトを駆け回るアラビアンなアサクリになるようで、シリーズ1作目のプレイが疎かだった自分にしてみればとても楽しみ。

アクティビジョンが『CoD』の開発体制を3スタジオによる3年サイクルとしたように、いよいよ本シリーズもリリースのスケジュールを再考するなど何かしらの変化が求められる時期に来たのかもしれない。