【レビュー #7】METAL GEAR SOLID PEACE WALKER(PSP)

キーワードは抑止力。世界のパワーバランスを保つのは核兵器か、それとも…。

良い点

小島監督が手がけたことはあり、携帯機でも「メタルギア」としての完成度は高いです。

本作のキャッチコピーは「潜友」であり、これまでのようなスネークによる単独作戦行動ではなく、仲間とともに潜入し力を合わせながらミッションを遂行していく新しい形の作品になっています。二人での協力アクションも随所に用意され、共闘感を味わえるようにデザインされているのも新鮮です。

音楽は相変わらずのクオリティの高さで、PSPの作品とはいえ主題歌にも力が入ってます。賛否両論があるキャラソングも、これまでのファン層よりも下の年代をターゲットとする上で効果的な使われ方と言えるでしょう。映画的にシーンごとの見せ場を大切にする小島監督ゆえ、アツい場面を大いに盛り上げてくれます。

シリーズ完結作である『MGS4』で不満だった無線ネタの少なさも、カセットテープでの録音という形で十分すぎるほどカバーされています。にやりとするようなネタも多く、その面白さは傑作『MGS3』に匹敵するほど。相変わらずの豪華声優陣の演技を堪能できます。

操作性は据え置き機の『MGS4』を踏襲しながら、ボタンの数の制約を上手く解消し、携帯機でできることの幅を広げています。貪欲に新しいことへチャレンジしようとする小島組の姿勢には好感が持てます。

総じて良作と言えるデキです。新規の方にも親切で、シリーズの中で最も敷居が低い作品とも言えるでしょう。

残念な点

「潜友」との協力プレイを導入した試みは評価しますが、スニーキングとco-opの調和の難しさが改めて浮き彫りになりました。マップも狭く、相変わらず強力な麻酔銃でゴリ押しできる中では、緊張感の高まりはあまり感じられません。シリーズをやり慣れているプレイヤーからすれば、むしろ一人でやった方がサクサクと進めるでしょう。

また、最大4人での大型兵器戦も大味で、防御力の高いスーツを着込み、ひたすら高火力のミサイルを乱発するだけの展開に終始します。ミッション自体も同じような敵ばかりで、ミッション数の多さに対して面白さは持続しません。

システム面では従来の ホフク を削った影響は大きいです。全体を勘案しての取捨選択だとしても、行動の選択肢がひとつ無くなるのは予想以上に窮屈に感じました。連続CQCを採用するくらいなら、ホフクを残してほしかったと個人的には思います。

ロードも地味に長く、メディアインストールもしくはDL版ですら決して「速い」とは感じられないレベルです。携帯機の作品ではテンポが大事なのですから、もう少し頑張ってほしかったです。

最後に

本作のストーリーは従来のシリーズとはかなり毛色が違います。MGSシリーズに愛着を持ち、『MGS4』のノベライズも担当されながら、昨年若くして亡くなった作家の伊藤計劃氏に捧げる思いで小島監督が作った本作ではSF色が色濃く出ています。

もしかすると、もっと多くの若い人たち(=本作のターゲット層)に伊藤計劃氏の作品のことを知ってもらいたいという小島監督の願いも含まれてるのかもしれません。


そう言えば、今作では「TACTICAL ESPIONAGE ACTION」ではなく「TACTICAL ESPIONAGE OPERATIONS」という表記。「これからのメタルギアを形作っていくための実験」だと小島監督が述べていることからも、今後もメタルギアシリーズが続くようであれば単純な潜入アクションのみならず、幅広い要素が盛り込まれていく可能性も高そうです。

小島監督の引き算の考え方から生まれたシリーズだけに、これからは様々な事を足していって新たなメタルギアの姿を見せてほしいところです。

METAL GEAR SOLID PEACE WALKER PSP the Best

METAL GEAR SOLID PEACE WALKER PSP the Best

  • 発売日: 2011/02/24
  • メディア: Video Game