レビュー #16:『Enslaved: Odyssey to the West』

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プレイした環境:【リージョン】北米版 【言語】英語

独特の美意識と世界観

本作は、カプコンの話題作『DmC』を開発しているイギリスのデベロッパー「ニンジャセオリー」が生んだアクションゲームです。

同スタジオはPS3黎明期のヒットタイトル『ヘブンリーソード』を手がけたことでも有名です。

個人的に『DmC』には期待しており、トレーラーや開発者ダイアリーは都度チェックしています。
その度に、映像からはゲーム内を彩る色彩の豊かさやスタジオ名の通りどこか東洋的なセンスを感じていました。

そして、本作をプレイしてその印象はさらに強まりました。

遠景まで美しいビジュアルは色にあふれ、まるで絵画を観ているような感覚を覚えます。
ゲーム内でスクリーンショットが撮れないのが残念なほどです。

「beautiful gaming」を掲げるスタジオだけあり、独特の美意識を持ってゲーム作りを行っているのが伝わってきます。

バンナムがパブリッシャーで良かったの?

サブタイトルやキャラクターの外見からも分かるように、本作は日本でもおなじみの「西遊記」にヒントを得ています。

ストーリーは著名な脚本家(アレックス・ガーランド)が担当しているそうで、SF要素満載のエピローグで語られるどんでん返しでは「人類にとって幸福とは何か」といった普遍的な問いを突きつけられます。

ただ、このソフト、バンナムがパブリッシャーで良かったのでしょうか?

開発元のニンジャセオリーが作り出す世界観とパブリッシャーとしてのバンナムのイメージがかけ離れているような気がします。

素人ながらに、「西遊記」という枠で宣伝するよりも、もうちょっと違った切り口で本作をアピールした方が魅力が伝わったように思えるのですが。

海外メディアからは非常に評価の高かったタイトルだけに、なんだかとても惜しい感じです。

アクション?アドベンチャー

操作的には移動はアンチャーテッド、戦闘はゴッドオブウォー的な感じですね。

主人公は驚異的な身体能力を持った「モンキー」なだけに、壁登りやジャンプは気持ち良くスイスイと移動できます。
この部分だけ見れば、アンチャーテッドよりも快適で楽しいです。

戦闘は如意棒(的なギア)でひたすら敵ロボットをぶったたきます。
攻撃は□(通常攻撃)と△(強攻撃)の2パターンしかなく、武器の種類も如意棒オンリー。

特別なコンボも用意されていなく、防御するよりも殴った方が早いため、アクションの駆け引きはあまりありません。

さらには、敵が異様なほど正確に「軸」を合わせてくるため、かなり引きつけてから回避しないと攻撃を避けられない点も気になります。
回避の無敵時間も少なく回避距離も短いので、囲まれるとタコ殴りにされる場合もあります。

敵となるロボットの種類もわずかしかなく、ボス戦もどちらかというとイベント戦に近いので、残念ながらアクション性は低いと言わざるを得ません。

ゲーム全体の探索と戦闘の割合は6:4くらいであり、同行する女性(トリップ)に指示を出しながら活路を開く場面が終盤まで続くことからも、どちらか言うとアドベンチャー要素の強い作品を好む方が楽しめる作品です。

メニューの開閉がストレスなかったり、HUDが見やすかったりとシステム回りはとても良く出来ていますので、このゲームにどういったものを求めるかで評価が変わってきそうなタイトルと言えます。

さて『DmC』はどうなる!?

開発元にしてみれば『Enslaved』をシリーズ化したかったようですが、いかんせん世界的なセールスが不振に終わり、あえなくその目論みは潰えました。
予定されていたDLCも開発中止となってしまったようです。

その代わりと言っては何ですが、『DmC』をクオリティの高いものとしていただきたいです!

HD機でアクションゲームを作り続けているデベロッパーだけにノウハウの蓄積はあると思いますし、「デビルメイクライ」の名を背負う覚悟があるのですから、世間の期待に応えるだけのポテンシャルを持っていると信じています。

アドベンチャーとしての楽しさは問題ないと思いますので、あとは戦闘メカニズムをいかに練り上げてくれるかのみです。

発表から1年半近く経ちますので、できれば今年中にリリースしてもらいたのですが、果たして!?