<総合評価> 9.2 / 10 (プレイ環境:北米版/日本未発売)
独創性 | 映像性 | 音楽性 | 操作性 | 熱中度 |
---|---|---|---|---|
5 | 5 | 5 | 4 | 4 |
感性に訴えかけるインタラクティブなアート
3作品に共通することは、プレイヤーの感性に響く体験を提供してくれる点。普段ならゲームを通して達成感や満足感、爽快感を得るものだが、これらの作品から感得するものはアートを鑑賞したときのような不思議な高揚感。ゲームとアートの境界をキレイに飛び越えた、あるいは両者のエッセンスを融合したインタラクティブな仕上がりは唯一無二。ただ、ゲームとしては「雰囲気ゲー」と呼ばれていることからも分かるように言葉では形容し難い作風であり、芸術と同様人によって向き不向きがはっきりとしてしまうかもしれないので、ぜひとも実際に触れてほしい。コア・ライト問わず世界各国のゲーマーから賞賛されているだけのポテンシャルは疑い無く秘めている。
美しく幻想的な世界と癒しの音楽
禅的でシンプルなflOw、鮮やかで色彩豊かなflower、荘厳で幻想的なJourneyとそれぞれの持つ世界観は異なるものの、どれもが美しく魅力ある映像。添えられる音楽も映像との一体感があり、プレイヤーはその癒しの空間へ没入できる。中でも、Journeyにおけるサラサラと流れる砂や雪、風に翻るマントの表現は見事で、アングルを変えながらずっと眺めていられるほど「絵」になる。さらに、エンディング直前の白砂の上で同行していたパートナーが感謝の砂文字を書いてくれた時は言いようも無い感動を覚えた。本作が多くの人を魅了する理由として、こうした繊細で優しい光景が人種問わず琴線に触れているのかもしれない。
なお、本作にはそれぞれのOSTも付属しているので、プレイ後も音楽を聴きながら思いを馳せることができる。
flOw、flowerを経て高められたJourneyの完成度
flOw、flowerと独自性の強いゲームではあったものの、PS3コントローラーのジャイロでの操作方法は若干のストレスがあった。コントローラーというデバイスの存在を忘れて、世界観と一体となる試みとしては有用なのかもしれないが、忙しいボタン操作に慣れているゲーマーとしては逆に不便かも。しかし、Journeyにおいてはジャイロだけでなく、左スティックでの移動・右スティックでのカメラ旋回も可能になり、より操作がし易くなっている。こうしたことで「ゲーム」として認識してしまい没入感が薄れるかと言うとそうではなく、旅ビトの足取りの重さを体感できる巧みな操作感覚だったように思う。作品毎にトータルなデザインとして操作方法まで考え抜かれているように感じられた作品群は久々だった。
まとめ
どれも比較や分類が難しい印象深い作品ではある中で、やはりJourneyのクオリティは素晴らしい。PS3独占タイトルとしては大型とは言えないものの、この作品をプレイするためだけにPS3ユーザーになる価値は十分にある。別記事にも書いたが、本作同梱(あるいはプリインストール)のエントリー型モデル
(欧州限定のフラッシュメモリ型のような)があれば、一定のニーズはありそうな気がするが…。
なお、開発元のTGCは今後PSプラットフォームに縛られない作品開発を行っていく模様。次世代機のPS4・XBOXoneともにインディーズレベルのタイトル供給にも積極的な姿勢を見せているので、こうした作品がこれからも生まれることを心待ちにしている。
<余談>
邦題の『風ノ旅ビト』も悪くはないが、個人的には雰囲気としてより厳かな『巡礼』という言葉を含んだ方が相応しいような。日本人が敬遠しがちな宗教色が出てしまうかもだが。
Journey Collector's Edition (輸入版:北米) - PS3
- アーティスト:Ps3
- 発売日: 2012/08/28
- メディア: Video Game