【レビュー #45】スプリンターセル ブラックリスト

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<総合評価> 7.6 / 10  (プレイ環境:日本版)

独創性 映像性 音楽性 操作性 熱中度
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ステルスを尊重しつつも幅広いスタイルで遊べるスパイアクション

今作における潜入に伴うスリルはスパイアクションゲームとしての老舗タイトルに恥じないものであり、昨今のステルス要素を取り入れたゲームとは奥の深さが違う。多くのゲームにおいてステルスが「ボーナス的選択肢(敵を一撃で倒せる等)」であるのに対し、本作においては隠密行動そのものに面白さや醍醐味を見出すことができる。「敵に見つかってはいけない」というスパイのルールがしっかりと前提にあることで、ゲームプレイには常に濃密な緊張感が漂う。

それと、今作ではあらかじめ3つのスタイル(ゴースト、パンサー、アサルト)が用意されており、これまでのシリーズであれば「敵を殺すこと」がマイナスとして評価されていたのに対し、今作ではアサルトスタイルであればプラスの評価を受けられることもゲームプレイの幅を大きく広げている。本来のステルス要素を維持しながらどのスタイルでも破綻しないゲームバランスは素晴らしく、プレイヤーによってストイックなサムもヒロイックなサムも演出できることでゲーム自体のリプレイ性もかなり高い。操作感やシステムが同社(Ubi)の人気タイトルと似ていることもあってシリーズ中でも取っ付き易い仕上がりなので、今作でスパイデビューしてみるのも悪くない。

看板タイトルの割にはグラフィックスのインパクトは控えめ

Farcry3』では美しいグラフィックに圧倒されたが、この時期にリリースされる同社の看板タイトルとしては映像面でのインパクトは低い。ティアリングや急激なフレームレートの落ち込みはないものの、トレーラー公開初期に見られたようなエッジの効いたシャープさを維持してほしかった。

なお、刷新された英語キャストのサムはなかなか若々しく、そのアグレッシブさにも迫力があって良い。相棒となるブリッグスの声も印象的で、徐々にサムに認められながら信頼関係を構築していくボイスアクトはいい味出してる。いかにも大国主義的でマッチョなストーリーに辟易する中で、個性的なフォースエシュロンチームのやり取りを眺めるのは楽しい。

「スパイvs傭兵」における非対象ゲームプレイは新鮮

最後に、今作の目玉のひとつであるマルチプレイ「スパイvs傭兵」にも触れておく。TPS視点のスパイ側とFPS視点の傭兵側との間で繰り広げられる非対称な攻防はとても新鮮で他のマルチプレイでは味わえない体験と言える。自由カメラで周囲を見回せるが打たれ弱いスパイと屈強だが視野が狭く(感度を最大にしても鈍い)機動力の低い傭兵の性能差は妙。ゲームバランスではもう少し煮詰めて欲しい点も無い訳ではないが、ユニークなシステムで遊んでみたいプレイヤーには十分オススメできる出来。特に、MGOを遊んでおり「TSNE(チームスニーキング)」が好きだった方にはぜひプレイしてもらいたい。

また、Co-opレベルデザインもよく練られており、シチュエーションも多彩。20〜30分程度の協力ミッションが12(+α)種類用意されており、ボリュームとしても十分満足できる。ただ、ホストとなるときに希望するプレイスタイルを提示できたり、希望のミッションを指定して検索できたりすれば尚遊びやすくなったはず。対戦・協力マルチプレイの内容ともにクオリティが高いのに、システム回りであと1歩足りない感じ。待ち時間の長いマッチングやホスト移行の問題など『Farcry3』と同様に運営面での拙さを伺えるのは残念だが、コンソールとしてもアップグレードする次世代機以降ではこのような点も改善して欲しいところ。


まとめ

スタイリッシュなコンバットアクションを用いても良し、それらを一切封印して完全ステルスを狙うも良しの今作は完成度が高く実に遊びやすい。プレイスタイルが固定しがちなステルスアクションゲームというジャンルにおいて、プレイヤーの意思や行動を尊重するゲームプレイを提供してくれたことは賞賛に値する。Ubiは評価されるタイトルの長所を他タイトルでも生かす傾向にあるので、スプセル次回作も大いに期待できる。希望としては、ドラマチックなQTE演出を排して「ボス戦」という概念を持たないゲームになってほしいのだけれど。