【レビュー #68】メトロ リダックス

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『メトロ リダックス』のレビュー。

【レビュー時のプレイ時間】 40h(両作合わせて)
<総合評価> 3.8 / 5

独創性 映像性 音楽性 操作性 熱中度
4 4 4 3 4 各/5点中


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*良い点*
  • ポストアポカリプスなロシアのSF小説を元にした骨太なストーリー。挿入される主人公アルチョムの独白や、先々で出会うキャラクターの膨大なセリフや人物描写は物語を丁寧に描き出す。FPS特有の没入感も相まって、ここまでストーリードリブンでその世界に引き込まれる作品はなかなか無い。オフラインのキャンペーンのみながら、かなりのプレイボリューム(15hほど)もある。
  • プレイヤーがメトロの世界に迷い込んだかのように、主人公アルチョムに同化できる。ひとり孤独に薄暗い地下トンネルや地上の廃墟をくぐり抜け、ようやく人気のあるメトロの駅や防衛拠点に到達したときに、同士のようにプレイヤーを迎えてくれるNPCの存在は温かく有り難い。主人公が歴戦の傭兵という訳ではなく、地下駅でくすぶるただの青年という立場なのも厨二的な良さがあって良い(笑)
  • 汚染地区ではガスマスクのフィルターを定期的に手動で交換しなければならなかったり、装備するヘッドライトを手回しで充電しなければならなかったりと、アナログな操作感が逆に新鮮。手に入る弾薬や消耗品も少なく、無駄撃ちできない緊張感や枯渇感がサバイバル感を高める。
  • 上記のように物資が限られる状況なので、必然的に正面からのドンパチを避け、隠密による各個撃破が重要になってくる。ろうそくの灯を吹き消し、電球を外して暗闇をつくりながらじりじりと攻略するスタイルは、ステルスアクションとしても楽しい。
  • テレビの洋画劇場のように、堅実で味のある声優陣による吹き替えは陰鬱で時に陽気な世界観に見事にマッチしている。このあたりのセンスはさすがスパチュンといったところ。字幕のフォントや文字も大きくて読み易い。
*惜しい点*
  • ボタン操作が煩雑で装備品の付け替えがあまりスマートではない。ガスマスクを装着しているのを忘れることもままあり、HUDに装着中を示すアイコンが表示されるなどしてくれると親切だったかも。(ただ、これは開発元が意図的に臨場感を高めるためにHUDを排した可能性もあるが)
  • FPSとしての爽快感・射撃感は低め。システムは違えど、同じサバイバルホラーのジャンルの名作である『Dead Space』のように、もう少し戦略的な戦闘があると良かった。対人間はともかく、対モンスターではひたすら銃をぶっ放すだけで、倒した手応えもほとんど感じられない。露骨なゴア表現を求める訳ではないが、奇形なモンスターを相手にするのだからもう少し捻った戦闘方法であって欲しかった。
  • チェックポイントの刻み方が少し雑。死んで直前のチェックポイントからやり直す際、自分のヘルスが死ぬ直前で相手からの被弾が確定している(=死亡確定)シーンが何度かあった。他作品でも起こりうるケースではあるが、それであれば任意の地点でのセーブデータ作成が可能などといった対処を施してもらいたいところ。
  • 2作品を通じてほとんど女性キャラが登場しない上に、男性キャラに比べてモデリングに力が入っていない(笑)近年の洋ゲーでは魅力的な女性キャラも多いのに、本作では一世代前の残念な造形を見ているよう。『ラストライト』では主要キャラに女性が登場したり、とある駅での「お楽しみ」もあるのにこの顔では…。

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【総評】

YouTubeで人気実況者の方が『メトロ 2033』をプレイしているのを観て本シリーズに興味を持ったものの、初作はXBOX360でしかリリースされていなかったので、本作のリマスターは非常に嬉しかった。『2033』を『ラストライト』仕様にリメイクしてくれたのも好印象で、制作者の本シリーズに対しての思い入れも感じられる。

ユーザーの嗜好からか、最近のFPS作品はマルチプレイ搭載が当たり前となっており、こうしてひとりで腰を据えて遊べる作品は少なく、そうした中でも本シリーズ(と『Dishonored』)は「らしさ」を失わずにクオリティを保ち続けていってほしいもの。

情報では既に『メトロ』新作が制作段階に入っているようなので、主人公アルチョムの贖罪と救済の旅が終わった今、次の物語がどのようになるのか、とても興味深い。