『République(PS4)』のレビュー。
発売日 | 2016年4月14日 |
ジャンル | ステルスアドベンチャー |
(2017年1月 フリープレイ提供)
カメラ越しに少女を救うステルスアドベンチャー
プレイヤーはスマホや監視カメラを自由に切り替えながら、メタモルフェーゼという監視施設から少女・ホープを逃すことが目的。操作としては、まずはカメラ等を使って敵の位置や行動を把握した後、見つからないようにホープを動かしていく。メタ的には、プレイヤーが指示を出し、ホープがそれに従って行動するという設定だが、実際にはホープの行動もプレイヤーが行えるため、プレイ感は『メタルギアソリッド』シリーズ(特に初代)の ”隠れんぼ” と『ウォッチドッグス』シリーズの ”ハッキング” を融合させたような感覚。
それと、本作はあくまでも非力なホープを誘導するというコンセプトなため、敵に対して行える攻撃は捕まりそうになった時に行える反撃(催涙スプレーでの一時的な目潰しなど)くらいであり、アクション要素はかなり低い(仮に捕まったとしてもゲームオーバーにはならず、ペナルティも軽微)。製作者の方も言っている通り、本作はステルスアクションと言うよりはステルスアドベンチャーといった体裁なので、そうしたアクションが苦手な方でも気軽に楽しめる作品となっている。
視点の切り替えがとにかくストレス
ゲームの操作自体は単純だが、視点切り替えの多い本作において、カメラが切り替わる度に2〜3秒のロードが挟まるのはかなりストレス。ホープ操作時は、初期『バイオハザード』シリーズを彷彿とさせる固定アングルのため、頻繁にカメラが切り替わり、その都度わずかに画面が止まる。加えて、カメラ操作時は画面の色が反転するため、距離感が掴み辛く、そのカメラがどこに位置しているのか分かりにくいのも難点。
元のスマホ版では快適だったのかもしれないが、せっかくPS4版でビジュアルのアップグレードを行ったのだから、もう少しきちんと最適化して欲しかった。本作に「32ビット時代へのオマージュ」を込めているのならば、もっと完成度(快適さ)に拘れたはずでは?
ディストピアな世界観でのストーリーには引き込まれるが…
全体主義の監視社会という典型的なディストピアな世界観は魅力的で、作中に散在する遺伝子実験(データ格納実験)にまつわる資料やメタモルフェーゼという施設名からも、監督者と呼ばれる人物の壮大な野望は垣間見れるが、その実態がはっきりと掴めないまま物語は幕を閉じてしまう。ホープを救う立場となるプレイヤーというメタ的な存在の定義も曖昧であり、展開に引き込まれるストーリーではあれど、肝心なところでの説明不足感は否めない。
「カメラを使って少女を誘導する」というスマホ向けのゲームデザインが先行していて難しかったのかもしれないが、舞台やキャラクター設定は興味深いものだったので、もう少しエピソードを割いて詳しく描写されていれば、より本作に浸れたのではないかと思える。
総評
作品のコンセプトや雰囲気はとても良いものを秘めていたと思うので、PS4版の移植に際して物語的・技術的にもう一工夫あればより高い評価を受けられたと思う。全体として、スマホ向けとしては荷が重く、コンソール向けとしてはやや物足りないな印象を受けたので、ライアン氏率いるCamouflajの次作は、インディー規模だとしてもコンソール(PC)を前提とした作品へチャレンジしていただきたいもの。
なお、前掲のファミ通インタビューからも分かるように、本作には旧小島プロダクション関係者の方々や『メタルギアソリッド』ネタが登場しており、思わずニヤリとしてしまう場面も。ゼーガー役の声優も、英語版スネーク役(『MGSV』以外…)でお馴染みのDavid Hayter氏なので、聞き覚えのある方も多いかも。
余談 その1
本作中では実在するビデオゲーム作品に関するゲーマーレビューだけでなく、全体主義国家を統治する監督者目線での古今東西における著名文学作品(本作内では「禁書」扱い)に対する ”否定的” な批評も聞けて面白い。
そりゃ、そんな環境で村上春樹を読んでいたら ”再矯正” されるよね(笑)
余談 その2
旧小島プロダクションのポッドキャストやブログ等を読んでいた方なら、名前を覚えているであろう「トジーン」こと戸島氏の姿が。本作プロデューサーのライアン・ペイトン氏の過去講演でも触れられている通り、コナミ退職後も仲の良い業界仲間みたい。
旧小島プロダクション解散前に既に退職されていることから、小島監督が新たに立ち上げたKOJIMA PRODUCTIONSへの合流は無いのかな。