発売日 | 2016年8月2日(日本未配信) |
ジャンル | アドベンチャー |
開発元 | Giant Squid |
『ABZÛ』(北米版)のレビュー。
ABZÛ とは…
アプスーまたはアプス(apsû、abzu)は、シュメール神話・アッカド神話において存在していたと伝えられる、地底の淡水の海のことである。湖、泉、川、井戸その他の淡水は、アプスーが源であると考えられていた。
アプスー - Wikipedia
「ABZÛ」の物語は古い伝承に基づいて紡がれました。「AB」は「水」を意味し、「ZÛ」は「知」を意味します。つまり「ABZÛ」は「知の海」の物語なのです。
Steam:ABZU
とのこと。
カラフルで鮮やかな海底世界に心安らぐ
シェルシェーディングで描かれた色鮮やかな海の中の世界が非常に美しい。水面から優しく陽の光が差し込む中で、生き生きと動き回る魚たちと一緒になって泳ぐ時間は癒しのひと時。表現の豊かになった現世代機の作品において水中を泳いだり潜ったりする作品は多いが、本作ほど情緒的なビジュアルは見たことがない。
本作を手がけたのは『風ノ旅ビト』のアートディレクターを務めた方ということで、本作においてもその優れた美術観は卓抜しており、視覚から心に訴える作品としては『風ノ旅ビト』にも劣らない。芸術を好むセンスは人それぞれなものの、誰しもが心を動かされるような普遍的な感性が備わっている作品と言えるほど、本作の持つ美しさは素晴らしい。
『風ノ旅ビト』と似ているようでどこか違う作品
冒頭からエンディングに至る全体的なプレイ感は『風ノ旅ビト』に近く、単純な操作と説明がなくとも自然と導かれるようなレベルデザインも共通している。
しかし、『風ノ旅ビト』が宗教的な描写(巡礼・信仰)であったのに対し、本作は上記引用の通り神話的な描写(創造・再生)であり、作風としては似ていながらも扱っているテーマは異なっている。私含め本作をプレイされた方で「感動的だが『風ノ旅ビト』とは何か違う」といった感想を抱くのは、描写やテーマの差によってプレイヤーの作品への関わり方に相違が生まれているからではないだろうか。
とはいえ、優劣を決めるようなジャンルの作品ではなく、本作のような表現で海の神秘さに触れられる機会は他にないため、『風ノ旅ビト』の存在問わず価値ある作品であることに変わりはない。
プレイボリュームと価格の釣り合い
今回北米PS Plusのフリープレイとして遊んだので価格を論うのは気が引けるが、2〜3時間程度でクリアできるボリュームであることを考えると、定価$19.99はちょっと高い。
ようやく配信されそうな日本では『風ノ旅ビト』と同じ1,200円程度であれば適正だと思いながら、過去のいくつかのインディーゲームのように日本発売と同時にフリープレイ化というのが理想。
総評
暑くなってきたこの時期にプレイするゲームとしては最適で、水中を漂っているだけでも涼やかで癒される作品。本作にはオンライン要素が無いため他のプレイヤーの化身となる “旅ビト” には出会えないが、周囲には数え切れない海洋生物たちが居るので寂しさはない。
短期間で何度も繰り返し遊ぶゲームではないけれど、疲れた時や他のゲームでイライラした時に起動すれば、アタマとココロを休ませてくれる穏やかな時間を送れるはず。