評価 7.2 / 10 (プレイ環境:日本版)
独創性 | 映像性 | 音楽性 | 操作性 | 熱中度 |
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3 | 4 | 4 | 4 | 3 |
良くも悪くもこれまで通りのメタルギア
ハードが次世代に移り表現の多様性も増えた中でリリースされた今作は、オクトカム(自動偽装)やTPS操作への刷新などの技術的な変更点が目につくものの、プレイしてみるといつも通りのメタルギア。スニーキングのスリルや緊張感に加えて、20年以上続くシリーズで強固にされた魅力的なキャラクター像は相変わらず。一方で、ゲーム進行のテンポを崩す冗長なカットシーンや「(登場人物の)語るべきこと」の多さなど、度々ファンからも指摘を受ける点もしっかり踏襲。今作は長きに渡る「ソリッド・スネーク」編の完結作であり、これまでの伏線や謎が(概ね)明らかになるため、プレイ歴の浅い(新規)プレイヤーには十分な予備知識が求められる。本作の面白さを味わうにはリマスター、アーカイブス配信されている過去作を知ってからのプレイをオススメする。
なお、今作のキーフレーズとして用いられている「NO PLACE TO HIDE」については、売りであるオクトカムの優秀性も手伝ってこれまでのスニーキングスタイルに大きな変化をもたらしているようには感じられない。「自動で接地している表面のテクスチャをコピーする」というシステムは次世代的だが、ナンバリング前作の『MGS3』のカムフラージュとプレイ感は何ら変わらない。前作でもその場に合うような迷彩服に着替えてホフクしていれば、たとえ目の前に敵が来ようと気付かれないし、言うなれば今作ではメニュー画面を開いていちいち着替える手間が減っただけのようなもの。さらに、今作では擬態する必要があるのはゲーム序盤から中盤に差し掛かるまでであり、その必要性も低いことが物足りなさに繋がっているように思う。
また、各ボスに感情を表現するネーミングが与えられ、敵兵も状況に応じて感情変化することについても、ゲームプレイに広がりを持たせているようには感じられない。そもそも敵の感情変化に気付きにくく、それを引き起こす状況もまれで、かつ、その有用性も低い。「現実においても人間の感情を推し量ることは困難ではないか」という指摘もあるかもしれないが、ゲーム内でそれを要素のひとつとして盛り込むのであれば、もう少しプレイヤーに作用するような特徴として欲しかった。メタルギアらしいお茶目な敵AIではなく、もっとストイックな、いかにも敵がプレイヤーに対する殺意をむき出しにするゲームであれば生きるのではないだろうか。
映像と音楽へのこだわりは「監督」ならでは
BDを2層フルに使っていることもあり、カットシーンの出来は素晴らしい。映画をこよなく愛する小島監督だけに、キャラクターの表情や個性を上手く表現するようなカメラワークは、場面ひとつ切り出しても絵になるよう。個人的には、ムービーからシームレスにボス戦に切り替わるシーンがどのように対処して良いか戸惑うスネークとプレイヤー心理が同調するようで好き。
音楽面も映画音楽の大家であり、シリーズでもお馴染みのハリー氏が手掛けているため、通常のゲーム音楽とは思えなほどリッチな感じ。オープニングや劇中で頻繁に流れるテーマ曲「Old Snake」は1曲の中でも哀愁、葛藤、解放がすべて込められているようで、今作のスネークの立場を表現する見事な楽曲だと思う。監督のエンディングでの選曲も相変わらず「いいセンスだ」。
操作性は悪くない、ただリプレイへの配慮が足らない
前世代機までの見下ろし型ではなく、一般的な肩越し視点のTPSスタイルへ変更した操作面は良好。中腰移動や横ローリングなどの新規アクションも上手く融合されており、純粋に操作しやすくなったと感じられる。射撃や投擲を行う際も狙い付けとアクションが2つのボタンに分離したため、前作までのように1つの感圧式ボタンで誤動作することが無くなったのがグッド。欲を言えば、これまで以上に多彩なアクションがスムーズに行えるだけに、『MGS2』や据置の『HD作品』のように60fpsで動作しているスネークの姿が見たかった。
操作面でのプレイアビリティは向上したにも関わらず、全編を通してのリプレイへの配慮はイマイチ。大半のムービーはスキップできるとは言えあまりにも量が膨大なため、いちいちスタートボタンを押すのも手間になる。パッチにより各章毎に断片的に行われていたインストールも最初に一括で行えるようになったことは有り難いが、ムービースキップも2周目以降であれば自動スキップを選択できるようにして欲しかった。飛ばせない冒頭のテレビ番組やエンドロールも合わせて20分以上あるため、何周も楽しみたいプレイヤーのためにもこちらにも工夫が必要だったと思われる。質の高いカットシーンは大歓迎だが、そのゲームを何度も遊びたいプレイヤーへの気配りも次回は期待したい。