【レビュー #42 / PS3】Tomb Raider

総合評価 8.4 / 10  (プレイ環境:日本版)

独創性 映像性 音楽性 操作性 熱中度
4 5 4 4 4
ー A SURVIVOR IS BORN

世界的に有名なゲームキャラクター(ヒロイン)の一人であるララ・クロフトの初めての冒険を描く本作。同時に、他社のアクションアドベンチャーに押されて停滞気味だったシリーズをリブートさせた意欲作でもある。スキル修得や武器のアップグレード、迫り来る大量の敵との激しい銃撃戦など、これまでの作風とは一変しているにも関わらず、世界的にも高い評価を受けていることから旧ファン・新ファンともに好意的に受け取っているように思える。

個人的にも成熟した今世代コンソール(PS3/360)に相応しいクオリティだと感じるし、シリーズが持つ「らしさ(遺跡の謎解きや奇想天外な超存在)」もしっかりと受け継いでいる。あどけなさの残るララが仲間と自分の信念のために屈強な冒険者(ララ・“クロフト”)へ成長していく様もたくましく、傷つきながらも常に前進するその姿はプレイヤーがコントローラを握りながら励ましたくなるような強い共感すら覚える。

ただ、過激なバイオレンス描写については意見が分かれるかも。「do-or-die」の過酷な生存競争を演出するために必要以上の暴力表現をあえて本シリーズに持ち込んだ姿勢を評価したいとは思うが、今作のララはこれまで以上に女性プレイヤーからも受け入れられそうなキャラクターだけに、ゲーム内で表現規制の選択などが可能であればより多くのファンから賞賛を得られたかもしれない(『Dead Space』並の残忍なゲームオーバーシーンは、そういったジャンルに耐性のあるプレイヤーでもなかなかヘビー……)。

ー 美しく幻想的な “ Yamatai ”

グラフィックは今世代機の中でも最上位クラス。うっそうとした森林地帯・無数の船の残骸が打ち上げられた海辺・敵が根城にする山村など、どの風景も細部まで描き込まれていて見入ってしまう。キャラのモデリングも良く、ララの魅力がゲーム中でも損なわれないのは流石(笑)

ボイスアクトに関しては英語・日本語ともにキャラクターの個性に合わせた優れた吹き替えのように感じるものの、甲斐田さん演じる日本ララはちょっと落ち着きすぎている印象も(むしろ、従来のララの声に相応しい気が)。日本版発売前に大いに批判された脚本そのままの日本語字幕もコンソールでは適用されなかったようで何より。

ー 操作性は概ね良好だがマルチプレイは蛇足

壁登りやロープアクションはレスポンスが良く、従来シリーズよりもアンチャーテッドのように軽快なアスレチックが楽しめる。また、今作で強くフィーチャーされているシューター部分(TPS)はよくあるカバーシューター型でオーソドックスな仕上がり。しかしながら、カバー状態からのブラインドファイアや走りながらのヒップショット、カバー間のスムーズな移動が出来ないため若干のストレスはある。敵の集弾率の良さや頻繁にダイナマイトや火炎瓶を投げ込んできてこちらをあぶり出そうとする行動パターンからも、こちらもブラインドファイアやグレネードなどの投擲物が使えればもっと効率的に戦えたように思う。

それと、マルチプレイに関しては完全に蛇足。マップデザインはマルチプレイに向かないし、ルールもバランスが取れていないため競技性や戦略性が低い。ラウンド毎にロードが挟まり進行のテンポも悪く、プレイヤーを長時間惹き付ける魅力も薄い。他のシューター作品のマルチプレイにはそういったジャンル(FPS・TPS)のみを好むプレイヤー(他ゲーをあまりプレイしていない)を良く見るが、今作のマルチプレイプレイヤーはトロフィーレベルが高い(=トロフィー目当てでマルチプレイをプレイしている)のが特徴的。シングルキャンペーンはクリア後の特典や周回要素が特に無いため、マルチプレイを搭載するのであればもう少し持続性のあるものを用意してほしかったところ。


ー《評》

ラスボス戦でのお馴染みのアノ武器の登場やエンディングでのララの目つきは過去ファンへのサービスか(笑)

発売前のプレビュー動画や前評判からアンチャーテッドの二番煎じ(アンチャがトゥームの影響を受けている云々は置いといて)になるのかと思いきや、バイオレンスを下敷きにしたサバイバル感は今作ならではでプレイフィールは大きく異なる。新しいララの魅力や可能性も相まり、ぜひともリブートした『Tomb Raider』の続編も期待したい。次世代機への移行を目前に控えた時期に見事に生まれ変わったニューヒロインの未来は明るい!?