#128『Prey』

『Prey』のプレイ後感想。

リリース日	2017年5月18日	ジャンル	SFアクションスリラー	評価	4.1 / 5.0

オリジナリティ・ストーリー
生存者がほとんど残っていない宇宙ステーション・タロス1において、襲い掛かってくる未知の生物 ティフォンに抗いながら、自らの失くした記憶や惨劇の謎を暴いていくミステリアスなストーリーが魅力。過去の所業が明らかになるつれてプレイヤーの中で変容していくモーガン像や、すべてを見通しているかのような口調でコンタクトを図ってくる兄・アレックスの存在にも言い知れぬ不気味さが漂う。アクション・スリラー・ナラティブの3要素が高い水準で組み上げられており、同系統の先行作品からの影響を考慮しても、本作の個性は十分に表現されている。

痩身のモーガンと肥えたアレックスの兄弟（兄妹）対比が印象的。

グラフィック・キャラクター・サウンド
膨大なテキストは丁寧にローカライズされており、文字は大き目でフォントも見やすい。ホラー演出は随所にあるが、グロ・ゴア表現はなし。サウンド面では、孤独な探索時・ティフォンとの戦闘時・宇宙空間での遊泳時など、それらの状況を耳からでも理解させてくれるようなBGMの使われ方が上手い。モーガン（特に男性版）とアレックスの吹き替えを担当された方の声色もキャラクターとマッチしており、NPCの吹き替えも統一感ある安定したクオリティ（『Dishonored』でも聞き覚えのある声がちらほら）。

『PsychoBreak 2』の収集品で見かけたマグカップは、本作由来のものだったことを知る。

操作性・快適さ
近接武器や銃火器の他に敵であるティフォンの特殊な能力（擬態・洗脳・衝撃波などなど）も自分に “インストール” して使用できたりする面からも、Arkane Studiosが開発・協力した『Dishonored』『Bioshock』のプレイ感に似ている。多様な武器や能力を使い分ける操作性・UIは良好なものの、十字キーの上ボタンに割り当てられたフラッシュライトは変更不可のため、ショートカットに武器を3種しか登録できないのは微妙に不便。ストーリー中は頻繁にステーション内を行き来する必要がある中で、区画移動の際に挟まるロードは気になる長さ（15秒ほど）。

タロス1外部の宇宙空間や無重力空間での操作には慣れが必要。

ボリューム・リプレイ性
敵からの被ダメージが大きく、不意打ちも多いため、難易度ノーマルでも結構手ごわい（本作の難易度イージーが一般的なゲームの難易度ノーマルくらいな印象）。死なないよう慎重に進んだり、回復アイテムを探し求める場面も多いため、シナリオのボリューム以上にプレイ時間が伸びるかもしれない。ただし、アップデートで追加された難易度ストーリー（イージー以下）であれば、被ダメージを気にせずゴリ押しできるので、テンポよく物語を進めていける。1周目で習得した能力を引き継いだ2周目も可能だが、武器強化はリセットされる。

全強化に必要なニューロモッドは1周では足りない。すべて習得するには周回が必要。

総評

2006年に発売された元祖『Prey』は未経験のため紹介記事等を読んでの比較になるが、再創作された本作のコンセプト・雰囲気の方が個人的に好み。作風として名作『Bioshock』を彷彿とさせるものの、「ケネディ大統領が暗殺を免れ、東西協力のもとに宇宙開発が進んだ未来」といういかにもなSF設定、Arkane Studiosらしい探索しがいのある宇宙ステーション内外のマップ環境、死体を含むあらゆるものを分子レベルの素材にして弾薬やアイテムを作成するクラフティングなど、“新生『Prey』らしさ” を確立する要素はしっかりと内包されている。モーガンとして没入していたプレイヤーにとって物語最後に待つ真実は衝撃的なものであり、それを知った上で本作を考察するのも面白さのひとつ。血みどろな『Dead Space』と恐怖の毛色は異なれど、宇宙ステーションを舞台としたSFスリラーとして比肩できるほどめぼしい作品。

PREY 【CEROレーティング「Z」】 - PS4